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建築用語集

建築やリフォームの現場で職人さんたちが使っている専門用語、じっくり聞いていると、面白いものがたくさんあります。それぞれに、意味を聞けばなるほどと思うものや、由来が謎めいているものも。職人の世界で受け継がれている小気味よい「粋」を感じます。

朝顔
建設中や解体中の建物から物が落ちても地上まで落下しないように、上に向けて突きだした仮設の防護柵。朝顔の花のように上に向かって開いているので、朝顔と呼ぶようになったそうです。
武骨に見える建築の現場ですが、上向きに開いているものを朝顔にみたてるなんて、その乙女チックさに胸がキュンとなりますね。
いじめる
二つの部材が干渉して納まらないとき、片方の部材を削るなどして、予定の状態でなく進め、無理矢理に収めること。
廊下の幅をとることを優先させるため、隣接するキッチンを少し狭くしたような場合、
「キッチンをいじめて廊下を広げた」などと使います。
結果的に両者ともきちんと成立させるための手法なのですが、なんとなくいじめられている方に同情的な気持ちになります。
閻魔様
和釘用の釘抜きを、俗に閻魔様と言います。
現在使われている釘は、丸い頭がある西洋式の釘がほとんどですが、明治の初め頃までは杖のような形の和釘が使われていました。現在の釘抜きは、クサビ形の切れ込みに釘の頭をひっかけ、てこの原理で抜きますが、和釘の頭はゆるやかに湾曲しているので、ひっかける部分がありません。その和釘を挟んで抜くための、先が丸くなったハサミのような形の釘抜き、それが閻魔様です。
昔話で、生前の悪行を白状する亡者達が嘘をつき、閻魔様がその嘘つき亡者の舌を抜く時に使う戦慄のアイテム、あれがこそがまさに「閻魔様」なのです。
遊び・逃げ
どちらも、「緩みのある状態。きっちりと締め上げてしまわずに、あえて緩みを持たせた仕事、もしくは緩みそのもののこと。」なんですが、動くもの、例えば障子と鴨居、とか、ボルトとナット、のようなものに使う場合は「遊び」、動かないもの、例えば壁と床の接地面での取り付け誤差や材料の加工誤差などを吸収するのにあらかじめとっておくすき間や重なりの余裕に使う場合は「逃げ」、だそうです。
ちなみに職人さんは、暇で仕事がない時にも「遊び」と言うそうです。
「今日は遊びやわ~」
「左官屋さんの作業が始まる前に逃げといて~!!」
遊べるぐらいの軽い気持ちで仕事をしていたが、荒くれ者の左官屋さんが来る日だと分かり、遊んでいるどころではなくなって、みんなで慌てて逃げ回る様子・・・ではありません。
裏金
カンナの刃の内側に仕込まれる補助的な刃で、裏座ともいいます。
裏金と呼びますが、必ずしも金属である必要はなく、削られたカンナ屑の方向が、真っ直ぐに上に登らないように変えられれば堅い木でもOK。
裏金を刃先に近づけすぎるとカンナ屑がカンナの裏にたまってしまい、離すと刃が木材に深く食い込みすぎるので、職人の感覚による微妙な調節が必要です。
「汚職」「政治家」「談合」方面で登場するものとは異なりますが、読み方は同じく「うらがね」です。
Cちゃん
断面がCの字のような形をしている、肉薄の鋼材のことです。C型鋼とかリップ溝形鋼とも呼ばれます。肉が薄いので溶接には不向きで、また屋外での使用には適しません。
Cちゃんの「ちゃん」は「チャンネル」のことで、鋼材は形状により「チャンネル」や「アングル」等に分類されます。
「Cちゃんがさ~、あんなこと言ってたよ~」「え~!?信じられない!!この前Bちゃんから聞いた話と違うじゃな~い!!」など、女子同士の井戸端会議で使用されるであろう隠語とは一切関係ありません。
あばれる
木材が乾燥のために伸びたり縮んだりねじれたり、大きく変形すること。
木材は伐採されて建築や製品として使われた後も、生きているので伸縮をくり返して変形します。木材は長手方向にはあまり縮みませんが、幅は大きく縮んだり伸びたりします。
「そこ、あばれんように、おさえて!!」
先ほどの荒くれ者の左官屋さんが暴れているのを抑えるのに苦労している様・・・ではありません。
おなま
レンガなど規定寸法(210×100×60)のものの別称。
おませな女子が「あの子ちょっと生意気なんじゃないかな」と思った時に使う「あなたもおなまね~」とは全く別の意味です。
とはいえ、なぜ「おなま」?
行って来い
長い部材をおさめるときに使う技の一種で、一度送りだしてから引き戻して所定の位置に納めること。
寡黙で厳しい親方の元で修業を積む若い職人。まだまだ半人前だが愚直なその姿に心を打たれ、ある日親方が静かに言った。「ヤス、お前ならやれる。自信持って行って来い・・・」というようなストーリを勝手に想像していました。
風邪をひく
セメントが古くなり凝固力が落ちること。馬鹿になるともいいいます。
風邪を引いたセメントは、硬化後の強度が低くなったり硬化しなくなったりしますが、困ったことに、風邪をひいているかどうかは外見からは判断が付きません。
セメント袋の封を切ったままにしておくとたちまち風邪をひいてしまうので、使う分だけ取り分けて、あとは封をしておかなければいけませんが、それでも長期の保存は難しいそうです。
ズルズルと水っぽく、本来の力が出せないところはまさに「風邪をひいた」状態。
うまい!!座布団一枚!!
埋め殺し
使った木材や型枠などを撤去せず、地中やコンクリート中にそのまま残置すること。
コンクリートや石材・木材などの廃材を埋めることは埋め殺しとは言わないそうで、本来なら掘り起こして撤去すべきものを何らかの事情で残す場合など、まだ使える材料を残すときに埋め殺しと言います。
「二代目争い」「組織」「抗争」「反社会」・・・といったイメージが浮かびますが、全く無関係ですので、念のため。
縁を切る
二つの部材や建物同士が、互いに影響を与え会わないような細工をすること。
例えば、下水管に排水する時の振動や音を床や壁などに伝えないために、下水管に緩衝材を巻く、などの処置をすることを言います。
「縁を切って!」と現場で言われても、今生の別れを突きつけられたと悲しむ必要はありません。
男にする
長方形断面の材料を、長手方向を垂直に立てる作業。
横長におかれた、本来立てて使う部材を重機などで高い場所にあげるとき、空中で位置をかえることは難しいので、地上で90度起こして、つまり男にしてから吊り上げます。
たくましい男性が、背筋を伸ばしてすっくと立つ雄々しい姿になぞらえたネーミングか、はたまた別方面の由来があるのかは、ご想像にお任せします。
犬走り
建物の周囲に砂利を敷き詰めたり、コンクリートを打った部分のことを、犬走りと呼びます。犬が通れるほどしかない空間、という意味です。
雨水の跳ね返りなどによって、基礎や建物が汚れるのを防ぐ目的で建物の周囲に40~60cm程度の幅で巡らせる通路状の床で、周囲の地盤より一段高くするのが一般的です。
犬が常時走っていなくても、猫が走っていても「犬走り」です。
ラーメン(構造)
RC構造、鉄骨構造等で柱と梁の接合部が一体化して変形しない躯体の骨組みをラーメン構造と呼びます。
柱や梁が大型になるので、大規模建築につかわれます。
「店主が研究に研究を重ねた液体の中にヒモ状の個体が浸かっており、メンマやネギ、チャーシューなどが水平もしくは垂直に乗っている仕組み」は「ラーメンの構造」であり、「ラーメン構造」とは全く別のものです。
ちなみにラーメンとはドイツ語で「枠」や「額縁」などという意味だそうです。
ノロ・トロ
セメントを水で溶いたもの。「モルタル」はセメントに砂をまぜて水で練ったものですが、ノロは水だけで練ったものです。トロとも呼びます。
流動状にして注ぎ込む場合にはトロということが多く、塗りつける場合にはノロと言うことが多いそうですが、「ノロ」と「トロ」とは語感に雲泥の差があり、「ノロ」の戦慄と「トロ」の陶酔のはざまで翻弄されること受けあいです。
一輪の手押し車、特にコンクリートなどを運ぶ深型のものを「猫」と呼びます。猫のように狭いところを通ることができるからなのか、押して動く際に猫の喉ようにゴロゴロと音を立てるからなのか、はたまた、裏返した姿が丸まっている猫のように見えるからなのか・・・諸説あります。
「猫、きれいに洗っといて」と言われて、その辺を歩いている猫ちゃんをつかまえて無理矢理洗おうとすると、派手に引っかかれますのでご注意ください。
アサリ
のこぎりの歯の先端を、一歯ごとに左右に開くこと。また、その広がり。挽(ひ)き道の幅を広げて、のこぎりの刃の摩擦を少なくしたり、おがくずを出やすいようにしたりするそうで、漢字では「歯振」と書きます。
のこぎりの刃先を見てみると、確かに先端が一歯ごとに左右交互に開いています。
職人さんは、木の種類や季節によって、アサリの幅を変えたりするそうです。
「のこぎり取って~。違う違う、アサリが大きい方!夏用のアサリの方や!」
のこぎりの話をしていたら、突然おなかがすいて、大好きな夏の大きいアサリのことを思い出した人・・・ではありません。
垂直に立てたものを倒れないようにするために地面から斜めに張るロープのことで、虎綱(とらづな)とも言い、垂直姿勢を維持するために三方にロープを張ることを、虎を張るといいます。
英語で引っ張ることをトラクション(traction)というので、その「トラ」ではないかとの説があります。個人的には、一休さんが将軍様に追い出せと命じられた屏風の虎のように、こちらを向いて勇ましく、垂直に立てたものを守っている姿を想像しました。
ちなみに、よく工事現場などで目にする黄色と黒のナイロンロープを「トラロープ」と言いますが、ナイロンロープは伸びるので、虎綱として使用するのは危険です。
目玉
半球状のものを、俗に目玉と呼びます。
例えば、天井にとりつける煙感知器や熱感知器などで、特別に何を指すかは決まっていません。
ちなみに、小さな立方体は「サイコロ」と言います。
サイコロ・ピンコロ
どちらも比較的小さい立方体の俗称です。扁平なサイコロはキャラメルと呼ぶこともあります。サイコロ状のものをいうので、特別に決まった対象はありませんが、大きさが10センチ程度になると、もはやサイコロではなく「ピンコロ」と呼ばれます。
一辺が10センチ程度の、庭や歩道の敷石などは「ピンコロ」です。
近年では「ぴんぴん長生き、ころっと往生」の略として、人生の理想の最期を表す「ぴんころ」がじわじわとメジャーな単語になりつつあり、長野県成田山の「ぴんころ地蔵」というお地蔵様には、年間数万人が参拝するのだとか。参道には「ぴんころTシャツ」や「ぴんころ団子」なども売られているそうです。
馬鹿棒
同じ長さを何カ所にも記すときなどに用いる、必要な長さに切断した棒のことで、馬鹿棒を用いれば、誰でも同じ長さにはかれることからきた名前と思われます。
馬鹿穴
ピッタリしていなければならない2材に緩みがあることを指します。
例えば、ボルトの径にくらべて大きすぎる穴や、仮止めにするために大きく作った穴のことです。当然ながら馬鹿穴に馬鹿棒を挿すとスカスカのバカバカです。
笑う
本来開いてはいけない部分に隙間ができることです。仕上げ面や下地面が、均質でなかったりデコボコしていたりするために下塗り剤との馴染みが悪く、上塗り剤の付かない凹面が所々に生じることなども、「笑う」と言います。
あいている隙間や、塗料がつかない凹みを、口をあけてアハハと笑っている状態に例えるとは、なんと心が穏やかで豊かなのでしょうか。
ちなみに中国に「開口笑」という揚げ菓子があります。沖縄のサーターアンダギーのようなもので、カラッと揚がってパックリ割れている様が、まるで口を開けて笑っているみたいだから、というのがネーミングの由来です。
パカッとあいているものを見ると笑っているように見える、その心の余裕を忘れないようにしたいものです。
いちころ
左官用語で、本当はいくつもの工程も経て仕上げる仕事を、一回の工程で仕上げてしまう事。
一発仕上とも言うそうですが、「いちころ」の持つ痛快感にはかないません。
三四五
三四五(さしご)とは建設現場内で直角を求める時に、簡易的に製作される直角三角定規、または直角を求める方法のことです。各辺の比率が3:4:5になる三角形を作れば直角三角形になることから、この名前がつきました。
直角三角形では「斜辺×斜辺=底辺×底辺+立辺×立辺」の関係が成り立ちます。
俗にピタゴラスの定理と呼ばれる三平方の定理ですが、大工などの建築職人たちはピタゴラスの定理を知らなくても、大昔からこの方法を「三四五(さしご)」と呼んで利用していました。
「三四五(さしご)」の起源は非常に古く、4500年前のエジプトでは既に3:4:5の直角三角形を使っていたそうです。
目つぶし
大きな石を並べたときにできる透き間を、砂利や砂で埋める作業、もしくは、そのための砂利や砂などの材料のことを目つぶしと言います。
その目つぶしを投げて相手の目をくらますことも、建築用語とは関係なく「目つぶし」と言いますね。
尻(けつ)を割る
職人が、約束した期間もしくは請負を、約束した状態まで働かずに途中で仕事を投げ出すことです。
お尻はもともと割れているのに、なぜいまさら・・・と思っていたら、どうやらもともとケツとはお尻のことではなく「欠」、つまり仕事を続けていく上で欠けている事情のことで、それを腹を割って、洗いざらい施主に話して仕事を打ち切るから「欠を割る」という表現をしたようです。
長い時間の流れと共に「割れる」方面の連想からなんとなく欠・・・けつ・・・ケツ・・・お尻・・・となったのではないかと推察します。
木殺し
木材を金槌で叩いて繊維を圧縮すること。
たとえば、ホゾとホゾ穴がぴったりするように、ホゾを叩くことを「木殺しする」と言います。また、密着させたい細工なども、組む前に軽く木殺しをしておき、組んでから水拭きすると、木殺しした部分が戻って木材の密着度が高くなります。
ちなみに、木材が圧縮されて縮むことを「死ぬ」と言います。
「死ぬ」だの「殺す」だの、やたらと物騒な言葉が飛び交う現場ですが、意味を知っておけば必要以上にドキッとすることも防げるでしょう。
叩く
金額を値切ることも「叩く」と言いますが、大工職人が現場で仕事をすることも「叩く」と言います。
大工道具の象徴である金槌で釘を叩く動作から転じて、大工が仕事をすることを「叩く」と言うようになったそうです。
たとえば、大工職人から工務店の経営者になった人が、再度、現場に出て大工仕事をしている場合は「社長が叩いている」となります。
鼻垂れ
レンガや石などを貼ったとき、モルタルの凝縮に伴い発生する白い液体を、「鼻垂れ」と呼びます。「白華(はっか)」、「エフロエッセンス」とも呼ばれます。
残念ながら現在この現象を完全に防止する方法は無いと言われていますが、発生しても製品や施工上の欠陥ではなく、耐久性が低下してしまう事もありません。
とはいえ、見た目上はかなり問題があるため、神秘の白い花が咲いたかのような「白華」や、ちょっとおしゃれなアロマオイルのような「エフロエッセンス」という呼び名ではなく、まさに施主にとっては「鼻垂れ」以外の何物でもないことでしょう。
花が咲く
塗料が塗装面から部分的にめくれ、反っている状態。トタンなどにペンキを塗って長年放置しておくと、剥離してきます。部分的に浮き上がってめくれている様子が、花が咲いているように見えることから付いた言い方です。
また、コンクリートが打設直後に強い雨に打たれて凹凸になった状態も、花が咲くといいます。コンクリートが固まらないうちに雨に打たれると表面が凸凹になりますが、それが花が咲いたように見えるためです。
どちらもいわば「望んでいない、好ましくはない」状態なのに、なぜか爽やかな達成感すら覚えてしまうのは、「花が咲く」という語に対して人々が持つ絶対的な好意ゆえでしょう。たとえ塗料がめくれ、コンクリートがデコボコになったとしても、落ち込んでうつむくことなどないさ、しっかりと前を向いて歩いてゆけるに違いないさ、そんな気分にさせてくれる素晴らしい表現です。
瓦割
瓦を屋根に敷いていく作業のことです。
雨戸や開き戸の桟にとりつけ、柱・鴨居・敷居などの穴にさし込んで戸締りする細木のことで、上下に動きます。
上に動いて鴨居に入るものを「上げ猿」、下に動いて敷居に入るものを「落とし猿」と呼びます。また、框に付ける場合もあり、この場合は、「横猿」と言います。
雨戸は一番外側に付くので、防犯性が要求されました。そのため、雨戸一枚一枚は横に連続させ、雨戸と溝を一体化させる「猿」を設けたのです。
上下左右に身軽に動く様が、確かに「猿」っぽいような気がします。